【コンプラ知恵袋】
マッチングアプリの利用にご注意ください
マッチングアプリには交際系のものが多く見られますが、それを利用することで、面識のない相手とコミュニケーションを取ることができるため、ビジネス勧誘の見込み客開拓に利用しようと考える方もいらっしゃると思います。しかし、法律(特定商取引法)では、マッチングアプリで知り合った相手に、副業やビジネス、製品購入に関する契約を勧誘する前に、必ず勧誘目的であることおよび氏名等を明示することが義務付けられています。
最近、マッチングアプリをきっかけにコンサルティング契約を勧誘し、消費者金融業者から高額な借入れをさせて契約金を支払わせていた事業者に対し、消費者庁が行政指導を行った事例を紹介します。
1. 事例の概要
令和6年11月頃以降、異性同士の出会いを目的とするアプリ(以下「マッチングアプリ」)で知り合った者から、「営業の仕事を紹介できる」などと説明を受け、紹介された人物と面談したところコンサルティング契約の話となり、契約金の支払い方法として消費者金融業者からの高額な借入れを勧められ、言われるままに借入れを行い支払いをしてしまった、という相談が各地の消費生活センター等に多数寄せられています。
消費者庁が調査を行ったところ、合同会社PLANET(以下「本件事業者」)が、消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(断定的判断の提供)を行っていたことが確認されました。このため、消費者安全法(平成21年法律第50号)第38条第1項に基づき、消費者被害の発生または拡大の防止を目的として情報を公表し、注意喚起を行いました。また、この情報は都道府県および市町村にも提供され、周知徹底が図られています。
2. 具体的な事例内容
(1)アプローチ
マッチングアプリで知り合った相手に対し、「営業の仕事を紹介できる」などと話題を持ちかけ、消費者が前向きな反応を示すと、「本件事業者」との面談へ誘導します。
なお、消費者庁の確認によれば、勧誘者は本件事業者の関係者であり、勧誘目的を隠して接触していました。また、年齢・職業・年収などを偽っていたケースや、マッチングアプリ事業者に対して虚偽の身分証明書や源泉徴収票を提出していた事例も確認されています。
(2)コンサルティング契約の勧誘方法
仕事を始めるために必要であるとしてコンサルティング契約の締結を勧誘し、その際、収入について断定的な説明が行われます。
- 金融商品や不動産を勧める仕事で、契約が取れた分だけ収入が入る仕組みである
- 契約金額は数百万円から数千万円で、100万円程度の案件が多い
- 契約金額の約15%が報酬になる
- 1件契約すれば15万円以上の収入になり、契約金以上は必ず稼げる
- 誰でもでき、必ず契約が取れる
(3)消費者金融業者での借入れ
契約金の支払いのため、消費者金融業者からの借入れを勧められます。
消費者は指示に従い、複数の消費者金融業者へオンラインで借入れを申し込み、1社当たり最大50万円を借り入れ、近くのコンビニで現金を引き出して本件事業者へ手渡しで支払います。
また、借入れの申し込みに際し、職業や年収を偽るよう指示されたり、確認電話で虚偽の説明をするよう求められた事例もありました。
(4)勧誘活動への誘導
コンサルティング契約後、本件事業者は会社概要やビジネスマナーなどの研修を実施したうえで、消費者に対し、マッチングアプリを利用して同様の勧誘を行うよう誘導します。
その際、プロフィール登録時に年齢・職業・年収・経歴等を偽るよう指示されたり、偽造された身分証明書を提供された事例も確認されています。
(5)結果
消費者は指示どおりに勧誘活動を行いますが、収入は得られず、消費者金融業者からの借入金だけが残る結果となります。
3. 消費者庁の判断と対応
本件事業者は、あたかもコンサルティング契約を締結し、その指導に従って仕事をすれば一定額以上の収入が得られるかのように説明していました。しかし、実際には収入は勧誘の成否に左右される不確実なものでした。
消費者庁は、このような行為は「断定的判断の提供」に該当すると判断し、被害の拡大を防ぐため、本件事業者の社名を公表するとともに、注意喚起を行っています。
4. 最後に
令和4年には、ネットワークビジネス大手A社の会員が、マッチングアプリで知り合った女性に対し、事前に勧誘目的を告げずに公衆の出入りしない場所へ同行させ、製品購入契約の締結を勧誘したとして逮捕され、A社が6か月間の業務停止処分を受けた事例もあります。
ネットワークビジネスでは顧客開拓が重要な活動の一つですが、マッチングアプリを利用する場合には、特定商取引法を遵守し、必ず事前に勧誘目的を相手方に伝えたうえで勧誘することが重要です。併せて、概要書面を相手方が契約する前に必ず手渡すことも忘れてはなりません。なお、マッチングアプリでは利用規約により連鎖販売取引の勧誘行為が禁止されていることがありますので、利用に先立ち、アプリの利用規約を必ず確認しておく必要があります。
